研究部長挨拶

研究部長 
東京学芸大学附属竹早中学校
杉坂 洋嗣

この度,岡委員長のもと研究部長を拝命いたしました東京学芸大学附属竹早中学校の杉坂洋嗣と申します。今期で設立65周年を迎える歴史ある造形教育センターの研究部長を務める責任の重さに,身の引き締まる思いで一杯です。微力ではございますが,これまで諸先輩方に長きにわたり繋いでいただいたセンターイズムを引き継ぎ,岡委員長をはじめ,今期の役員のみなさん,そして会員のみなさんと共に研究活動を推進していきたいと考えております。宜しくお願いいたします。

私事になりますが,本年4月より東京学芸大学附属竹早中学校に勤務することになました。それまでは静岡県東部の公立中学校に勤務し,造形教育センターでは静岡支部の一員として活動に取り組んできました。静岡支部も立ち上げより6年が過ぎ,今期は静岡支部の設立に尽力されました夏目幸弘先生が再び支部長に就任し,本部研究にも参画いただくことになりました。

先日委員長を拝命するにあたり,諸先輩方が繋いで下さった造形教育センターのこれまでの歩みを振り返ってみようと思い,春日明夫先生(東京造形大学名誉教授)が編纂されましたセンターニュース(第1号~120号)に目を通してみました。すると驚くことに,1969年8月12日から14日にかけて,「第13回夏の研究会」(坪内委員長,西光寺研究部長)が静岡県浜松市北庄内小学校を会場に開催されていることを知りました。恥ずかしいことに,静岡支部に所属していながらその事実を初めて知りました。

また,造形教育センター20周年史には,林建造先生が『美育文化』(1969年11月号)に執筆された,「第13回夏の研究会レポート」が収められており,その記載の中には,「(略)周知のように浜松はうなぎの産地,猛暑にもめげずはそのため。また,宿舎は明びな風光をもってなる舘山寺荘であったことにもよるが,地元の浅野,菅沼,小杉,その他の諸先生方の献身的な御尽力のおかげであった。」とあり,50年もの前に静岡で活動していた先輩方の存在を初めて知ることになりました。

20周年史には5名の静岡県内の先輩方による記載もあり,当時,浜松市立滝沢小学校に勤務されていた村木権先生の記述の中には,「浜松に静岡支部がつくられたのは,もう十年前になろうか。それは自分が浜松市立曳馬小学校に在職のころだった。図工主任の菅沼先生のご指導を受けながら,デザイン教育を子供のものにしようとささやかな研究を試みていたときである。」とあり,私たちが6年前に初めて立ち上げたと思っていた静岡支部が,じつは50年もの前に創設されていた事実に再び驚くとともに,その当時からデザイン教育を子供のものにしようと研究に取り組んでいた先輩方の姿勢に,あらためて背筋が伸びる思いになりました。(ちなみに,静岡支部の設立には菅沼秀親先生の尽力によるものが大きかったことも分かりました。)

私事が長くなりましたが,来年,造形教育センターは設立65年を迎えます。そして来年の夏の研究大会は,50年の時を経て静岡県での開催となります。静岡支部長である夏目先生には大会委員長にも就任していただきました。このように,65周年を迎える造形教育センターの中には,戦後の民間美術教育団体を牽引してきた長く深い歴史があります。私はその長く深い歴史を受け継ぎながら,今という時代に造形教育センターに携わり,また,次世代へと引き継いでいく責任を敢えて負いたいと思います。「私は」とあえて言わせていただいたのは,造形教育センターのセンター(中心)が会員一人一人であるという自覚があるからです。

さて,私たち造形教育センターでは,「子供の創造性の『いま』と可能性」について桐山前研究部長のもと研究を推進してきました。子供の創造性が,「明るい未来を生きる力」を育む可能性に開かれていることを明らかにする一方で,このような可能性に開かれた「創造性」が,どのような意味で社会から求められているのか俯瞰して捉える視点がなければ,子供の「創造性」を大人の都合によって利用したり,搾取したりすることに加担してしまう危険性にも開かれている,ということについても同時に明らかにしてきました。

その上で,昨年10月1日より,「図画工作」「美術」「音楽」等の芸術教育の所管が,文部科学省から文化庁に移管された現実を私たちはどのように理解すればよいのでしょうか。あるいは,「学校教育における人材育成からトップレベルの芸術家の育成まで一体的な施策」を推進することが,国の施策として定められた現状を私たちはどのように捉えればよいのでしょうか。考えていかなくてはいけない問題は山積しています。

今期の研究テーマは上述した問題意識から,『造形教育の今日的意義』と設定し、「社会に開かれた」巨視的な立場からその意義を問い,顕在化させたいと考えています。その上でサブテーマをこれから見えてくるであろう、具体的な今日的意義を問う視点として掲げていきたいと考えています。また、そのために同時代的な「社会」のあり様を,「学際的な視野」(教育学,法学,文化政策学,社会学,文化人類学,美学・芸術学,心理学,等様々な視野)から問う月例研究会を実施していきたいと考えています。それは「子供」を「社会」の中で育てようとする造形教育の意義について問うことにも繋がると考えています。

最後に、私たちはバウハウスの理念を受け継いだ造形教育センターの「運動体」としての本質を追究します。そのためには「造形教育の今日的意義」をひろく「社会に開かれた」立場から問うことで、顕在化させます。その上で,研究活動を探求しつつ,それぞれが、それぞれの置かれた立場で、実践・実行していきます。そして、その研究成果を広く社会に「発信」していきます。なにより、「一人一人がセンターである」ことを大切にしていきます。

皆さんの積極的な参画をお待ちしております。今後とも宜しくお願いいたします。