3月16日(日)に開催された月例研究会では,「モノとぶつかる価値・子どもたちの姿から」をテーマに,東京学芸大学附属竹早小学校・同附属竹早中学校での実践発表が行われました。
小学校は桐山卓也先生が図工における「創造的」な活動の重要性について発表してくれました。「創造的」とは,「既存のものを組み替え,新たな意味を生み出すこと」,「考える余地や選択肢があること」,「表現を通して多幸感を得ること」であり,子どもたちが主体的に表現活動に取り組むことが図工の目標であると自身の考えを述べました。具体例として,風景画に残された余白に子どもの意図を見出すことを示し,単なる指導目標達成に留まらず,子どもの思いを尊重する指導の重要性について語ってくれました。また,工作活動における独自の工夫を肯定し,結果にかかわらず価値づけることで,主体的な学びを促す姿勢も紹介されました。桐山先生は,遊びや感動を通じた表現の大切さを強調し,自由な活動の価値を保証しながら,教師がその意味を見出す役割を持つことが大切であると強く述べ,小学校の発表を終えました。
中学校の発表では,杉坂洋嗣先生が中学3年生を対象に行った「世界と私の関係性~私との対話~」の実践が紹介されました。思春期の生徒が自己表現に抵抗を感じる現状を踏まえ,単なる自己内面の表現に留まらず,自己と社会・世界との関係性に着目し,「問い」を生み出すプロセスを重視する授業が提案されました。この「問い」は,モノと相互作用する中で言語化できない違和感として生じ,造形活動によって意味や価値が見出されるものであるとされました。言語優位の社会において,未分節なモノとの関わりから生じる問いこそが,造形の意義であると提起されました。
参加者との質疑応答の時間には,造形活動の本質や評価のあり方について活発な意見交換が行われ,参加者の方々にも,モノとぶつかる価値について問い直す機会が投げかけられた月例研究会となりました。