12月月例研究会

◆平成21年12月6日(日) 午後3時~5時 
◆東京学芸大学附属竹早小学校 竹の子ルーム

小泉薫新委員長のもと,新しい体制での初めての月例研究会となりました。岡研究部部長よりこれからの研究テーマについての提案と,長田先生よりセンターの活動にもヒントを与えてくださった講演を頂きました。

◆研究テーマについて(岡研究部部長)

研究テーマのためのキーワードとして創造性を考えた。センターで考えている創造性はこういうものだと考えるのではなく、多様なものであると考える。私が子 どもたちの活動を見て感じるのは、無意識である。イメージの生成の根源にあるものが一番深いところにあるもの。無意識の創造性に繋げた。
 実践紹介
【香りで絵を描く実践】自分の心と向き合い、答えがないものを探さなくてはならない。得意な子の作品だけが素晴らしいのではなく、苦手な子の作品に表現力 や技術を超えたものがある。自分で意識する感じではなく、子どもの無意識が出てくる。
【カッター職人】自分で意識はしていないが、自分の中に残ったものが作品としてあらわれてくる。今までの体験,経験など作品にあらわれてくる。
 創造性のとらえ方は多様である。多様であるからこそ良いとも言える。造形美術教育の枠の中にとらわれずに、理論や知識を共有することも大事である。ま た、そこで得たことを造形美術教育にフィードバックしていかなければならない。そこから子どもたちの行動の価値に気付くことができる。子どもたちがそれぞ れちがう創造性を発揮していく、それをどう評価すればよいか、良さをとらえればよいかが課題になる。

理論を大切にしながらも子どもをベースにすることも忘れないようにしてほしい,二年間のサイクルを考えて研究を進めていくなど,意見が寄せられ,充実した提案になりました。

◆講演会「視覚文化時代の<生きる力>とイメージの力」

長田謙一先生(首都大学東京)
 ・研究テーマについて
クリエイティビティを発揮する限りにおいて,人間は芸術家なんだというのが教育の問題っでもあり、アートの問題でもある。岡先生の話から「表現性やクリエ イティビティの発揮において人間は芸術家である」というボイスのことばを思い出した。
 美術教育の危機が叫ばれて下手すると30年近くたつ。新学習指導要領の図画工作科は歴史的な文脈や行政的な文脈の中で生まれているのかを織り込んでいか ないと読み切れない。その中で毎回ここがポイントだということがある。つぎの時代の美術教育をつくりだしていくてこのような働きがある。今回感性や共通事 項ということばが入ったのは印象的である。人間の感性は表面的なものではなく、人類が注ぎ込まれている内側のインターフェイスが関わる。その感性を働かせ ながら、図工に関わってくる。現代的に読み込むことが大切であり,情操ということばも,ずっと深いレベルでとらえる必要がある。
感性は生きる力の根幹であるがそれと生きる力がどう繋がるかが今日の話。ヴィジュアルを視覚に限定するのではなく、様々な人間の生理から,生きる力の根幹に繋げていく。

 

・イメージについて
イメージとは子どもたちが共通の意識をもつこと,つまりこどもたちが自分のイメージの主体になることだ。ここまで美術教育の課題を明確に打ち出したことは かつてない。イメージは言語と似ているし,
言語がそういうイメージを豊かに掘り起こす。自分どのようにイメージを獲得しているか,ということを美術教育は全力をあげて取り組まねばならない。
・視覚文化について
子どもたちは視覚文化の時代にあって自分のイメージを持っていかに生きることが可能かというのが課題である。図工美術はさしあたり、アートやデザインを中 心に位置づけるが、本当に子どもたちの創造力を養えるかということをつなげていかなければならない。美術をもう一度考えてみると。絵画彫刻などの領域は意 味しない。参加型,プロセス型などを包含しながら意味生成を生きるのを可能にする。つまり、制作表現鑑賞を通して、主体として生きていく。意味生成の秩序 を獲得することができるということである。まさに生きていく力の根幹にある。そういった意味生成を形成していくというのは世界の文化秩序を問い直すという 力を発揮する。
・デザインについて
近代デザインの中で主要となるのは大衆が生まれてきたこと。感性価値創造に焦点をあて、日本の経済は発展しなければならない。デザインはそのような社会シ ステムの中で機能してきたのだろうか。我々は北半球のライフスタイルを考えている。しかしそのことを考えるとほんの一部の人間に焦点を当てたデザインにな る。アメリカで,地球上の90パーセントの人のためのデザインとして,水を浄化しながら飲めるストローが考えられていた。日本の美術教育の中でどういう位 置づけをしていくか。自分の生活の中で本当に必要なものに形を与えていくことがイメージの力であり、デザインの力である。
他にも千葉大学の学生のデザインが紹介されたり,共生という重要なキーワードが示されたり,大変示唆に富んだ内容でした。本当にありがとうございました。

また、月例研究会の後には忘年会が行われました。
美味しいドリンクや料理を片手に、皆でざっくばらんに語り合える時間となりました。毎年恒例のセンターオークションも、たくさんのご協力を頂き、盛り上がりを見せました。
造形教育センターの益々の発展を祈りながら、大盛況のうちに会を終えました。