月例研究会

造形教育センター332期 12月月例研究会 報告

12月の月例研究会は,「授業と遊び 子供のためのデザイン」というテーマで行われました。

今回話題提供をしていただいたのは,筑波大学附属駒場中・高等学校の川人武先生と,プレイパークの研究を行っている天野英昭氏です。お二人とも活躍されている場は違いますが,造形活動を通して子供たちの成長を願っている点で共通しています。

川人先生は筑波大学附属駒場中・高等学校での実践と,前任校であった都立工芸高等学校での実践をお話してくれました。学校での日常の子供たちの様子や,文化祭などの学校行事を紹介していただき,子供たちの背景にある美術や工芸以外の授業時間外の様子が伝わりました。そのことにより,美術の時間の実践について,背景にある子供たちの生活場面につながっている姿を分かりやすく示していただけました。写真の実践から,生徒が遊び的に活動をしている姿、仲間とコミュニケーションを深めていく様子、撮って見せることから鑑賞と表現をつなげていくという学習など多様な視点で実践の価値をお話していただけました。また,筆を扱うことに苦手意識をもっている子供に,丁寧な声掛けをしてレタリングを行っていくことから,子供の実態に合わせた実践ということをお話いただけました。他にも過去の芸術家が男子高校生に転生したらどうなるか,というユーモア溢れる問いかけから題材をつくり,子供たちと活動をしていく様子なども紹介いただきました。川人先生の子供たちに寄り添った実践の数々、そして何より子供たちと共に楽しんで授業を行っているということを見習っていきたいです。

天野先生はプレイパークでの子供たちの生き生きとした姿を伝えてくれました。ウォータースライダーや泥の遊び場など,魅力あふれるプレイパークの環境は雑菌だらけですが,そのことにより子供たちの体を強くするということでした。楽しみながら身体を強くしていく環境から今の学校の在り方について過保護になっていないか,自分にも思うところがありました。プレイパークに来る子供の保護者から風邪をひかなくなったと言われると天野氏は話してくれました。泥の中に首まで入り込んでいる子供の姿を見てうらやましくも思います。

子供たちが自由に道具を選び,つくりたいものをつくっていく姿や,遊びの環境をつくっていくことにも危機管理の視点を取り入れていることなど,学習環境をつくるということで授業のデザインに取り入れられることは多くあると一授業者として感じました。プロセスに価値があることを何度も協調して伝えてくれました。プロセスに隠し味があるという言葉はとても共感します。そこに知恵や工夫が生まれるということについても,多くの美術教育を専門とされている先生方は同じことを思うのではないでしょうか。

天野氏の多くの言葉が印象に残っています。遊ぶことの価値は表現の価値ということであり,「わたし」の世界の構築であるとお話をされていました。生きる力とは,教育で教えることが出来るものではなく,本人が自分の世界を生きる中で気づくことになるということに,まさに,美術教育で大切にしていることと共通していると感じました。教育と遊育という考え方,システム化という状況,少子化ではなく大人の肥大化など,とても印象に残るお話の数々とその深みについて,ここで伝えきれない量になります。

是非,多くの皆さんに参加していただき,同じ場で感想を伝え合えたらと思いました。

2023年も造形教育センターをよろしくお願いします。

(文責 守屋)