月例研究会

造形教育センター332期 2月月例研究会 報告

2月の月研は,造形教育センターとしては久しぶりになる,鑑賞をテーマにした月例研究会でした。テーマは,「地域・文化・学校をつなげる美術館,そして子供」です。美術館や展覧会については,人生において美術文化を親しめる人間を如何にして育てていくかという,美術教育の課題の一つに密接につながります。東京学芸大学附属大泉小学校の鳥居瑠佳先生には校内展覧会づくりについての実践をお話していただき,学校行事である校内展覧会をどのようにプロデュースしているのか,教師の役割について話をしていただきました。また,独立行政法人国立美術館主任研究員の稲庭彩和子さんのお話からは,美術館で行われている豊富な鑑賞プログラムの実践を紹介していただきました。鑑賞の手法と実践から,参加者にどのような変化があるのかを理論と併せて教えていただき,学校現場で生かせることなどを学んでいきました。

鳥居先生は,プロジェクションマッピングを用いた展示の方法などで校内展覧会の新しい方法を模索しながら,学校全体を巻き込んで展覧会運営を行っています。美術の先生や図工の先生は学校の中でも一人しかいないケースが多く,孤独な存在であるといえます。図工美術の先生が中心となって展覧会運営を行うには他の教員との調整も必要になってくるでしょう。このことに伴う苦労も,展覧会の価値などを他の教員に伝える効果に変えられます。展覧会を運営することは学校をデザインするという意味があると思われます。

稲庭さんは神奈川県立近代美術館や,東京都美術館の学芸員を歴任された方です。多くの実践がありますが,表題にあるように美術館と社会とがつながることを考え,それが社会全体のウェルビーイングになるようにねらい,実践をされている方です。身体性を活用した実践である「美術館でポーズ」では,彫刻を身体で表現する実践で,外国の児童が言語をこえてつながる興味深い実践でした。

学校と美術館,双方が手を取り合い子供のための鑑賞教育について考えていかねばならないと思います。それは学校が美術館に訪問するような連携という方法だけではなく,互いの実践を知りあうことから,それぞれのよさを取り入れ,実践に変えていくことでも可能になるでしょう。

資料の中には神奈川県立近代美術館の頃に企画展で携わったことがあるという,造形教育センターの大先輩である小関利雄展についての記されたものもあり,写真なども見せていただきました。

造形教育センターの332期の研究も前半が終わりました。これからは役員の実践を中心に,「社会とつながる子供のデザイン」について考えていきます。    (文責 守屋)