夏の研究大会

第68回 造形教育センター夏の研究大会報告②

夏の研究大会1日目の午後は成城学園初等学校の体育館を会場にしてワークショップが行なわれました。成城学園の児童と白百合女子大学の学生とが段ボールを使って体育館を変えていきました。子供たちは,すべり台や迷路などそれぞれ自分たちの関心から思うままにつくりたいものをつくっていきました。大学生はそこで子供たちとどのように折り合いをつけて共に活動をしていったのか,椎橋先生に後日、実際にあったことを解説してもらいました。

その後の講演は豊田啓介先生(東京大学生産技術研究所特任教授、NOIZ、gluon)をお招きして行われました。社会が雑音だと思っているものに価値基準を与えていくという話があり,そこは造形教育でも私たちが意識をしなければならないことだと思いました。そのような視点で行っている豊田先生の仕事をいくつか紹介していただきました。

豊田先生の講演の中でも,デジタル環境の整備をしておくことでデジタルとフィジカルをつなぐコモングラウンドを作り上げていくという話は,これからの社会の可能性の一つになります。人間外の視点であるロボットやAIが入りこめる環境をつくることで,人間にとってもできることの選択肢を増やしていくということは,インクルーシブ教育にも通じる学校現場に還元できる多くの示唆を得ることになりました。

その後に続く鼎談でも,登壇した石賀先生や,参加者からの疑問や質問に応えてもらいました。身体性や感情などの人間であることから付いてくるもの,そしてどこまでデジタルの領域で補えていけるのか,様々な境界線が見えてくる話題が広がりました。

石賀先生は2日目の朝にワークショップの話と豊田先生の話をつなげ,改めてワークショップで子供たちが行なっていたことを解釈してくれました。段ボールをモノとしてみるのではなく,社会を形成する情報としての段ボールとして見ること,そして、情報として段ボールを通して子供たち同士は言語がなくとも造形活動を共有していく。そこでつくられているのは社会であること。いずれそこにロボットやAIが入りこんでくる未来が来るのかもしれません。